3/26/2010

How do we effectively overcome Medical device Lag?





「人工臓器、日本のギャップ」朝日新聞グローブ第36号(2010年3月22日)をご覧になった方はいますでしょうか?そこでは、欧米と日本では治療用医療機器について患者に届くまでに大きなギャップがあり、それをどうすれば解消できるのかを特集しています。

http://globe.asahi.com/feature/100322/index.html

重要な部分を要約しておきましょう。「審査と承認、なぜヨーロッパが日米に先行するのか」という部分では、日本企業による治療機器の開発が進まない理由が主に2つにまとめられています。すなわち、1つは審査や市場の大きさといった要因以上に、医療機器に関するリスクの受け止め方-事故が起きたら責任追及、風評被害も大きい。いま1つは、医療機器を医薬品と同じ考え方で審査していること。加えて、最後の「医療機器は「成長産業」になれるか」という部分では、ベンチャーの育成、審査プロセスの透明化と政府当局による審査の再考(欧州のように認証機関による審査の可能性)、医薬品と医療機器の規制の区別、医療費への影響と開発インセンティヴの財源調達などが検討課題として挙げられています。

おそらく、究極的な問いは、「ある程度のリスクを承知で、より早く革新的な医療機器の治療を受けたいのか、それとも、リスクを回避するために欧州と米国の審査承認から遅れて医療機器が届くことを甘受するか」ということでしょう。わが国が前者を選択する場合には、「ある程度のリスク」を可視化し、そのリスクをどうやってステイクホルダーの間で分け合うか、そしてリスクが事故という形で顕在化した場合にどうやって是正措置を講ずるべきか、そのような検討をすることになりますね。

他方、後者を選択する場合には、欧州と米国の審査承認からどこまでの遅れを想定内とするのか(受けられたかもしれないよりよい治療にアクセスできない損失の甘受)、原則その遅れを甘受するとしても、例外的にいち早く医療機器を患者さんに届けられる場合を設けなくてよいか、設ける場合にはリスクの分担、事故が生じた場合の是正措置のあり方などについて考えてゆかざるを得ませんね。

特集の一部(G5)には、次のような一文があります:「多くの患者が使う前に、安全性や有効性を確認する審査は重要で、どこまで厳格さを求めるかは、それぞれの国の判断だ」。この一文にはまったく記載されていませんが、「国の判断=われわれ国民の意思の反映」、という大前提を忘れることはできないなぁ、と思っています。

皆さんは、病気になった時にどんな医療機器で、どのような治療を受けたいですか?企業にどんな医療機器を、どのように作ってもらいたいですか?"Overcoming Medical Device Lag"の第一歩は、そこにある気がします。

注:写真と本文に特別の関係はありません。未来が開けていますように、そんな願いを込めています。