2/25/2010

新居浜調査

当センターでは、超高齢化社会の中で、高齢者が安心して生活できる環境・制度を構築するための研究に取り組んでいます。

今回、高齢者への医療・福祉領域、特に在宅での高齢者への医療・介護について考えるために、愛媛県新居浜市の新居浜医療生活協同組合(以下、新居浜医療生協)を訪問しました。

新居浜医療生協は、地域に根付いた住民参加型の医療・福祉体制を目指して、診療所を中核に、在宅での医療・介護の提供や高齢者向けのシェアハウスの提供を行い、医療と介護を横断したサービスを行っています。

現在、保険制度上では、医療と介護は分離しており、通常は別の機関がそれぞれ医療と介護を担当しています。新居浜では、医療生協が両方の施設を保持することで、医療と介護のサービスをつなげ、一体化させています。

このことによって、医療側の情報はスムースに介護側に伝わり、患者の健康状態にふさわしい介護を行うことが出来、また、逆に介護側から情報が伝わることで、自宅にいても医療側は患者の健康状態を把握したり、予防的処置を試みたりすることが可能となっています。

医療・介護間、そして医療生協と地域との間に、緊密な連携を築くことで、高齢者の方が求めている医療・介護を、必要なタイミングで提供することを目指しています。

住み慣れた自宅での終末期医療を希望する方には、在宅での看取りを行い、高齢者の生活の質の向上に取り組んでいます。

新居浜医療生協は、これらの医療・介護分野での特徴に加えて、高齢社会におけるまちづくりや働き方に関しても、独自の考え方を持っています。

高齢者向け・認知症患者対応型のシェアハウスを設置し、高齢者が共同生活を行う環境を作り出す、あるいは定年制度を廃止し、柔軟性の高い労働環境を作ることで、70代であっても現役で仕事が出来る環境を整備するなど、これまでとは異なるまちづくり、働き方のあり方を示しています。

高齢者が若者に依存せずに、安心して生活できる環境作りを、まちづくりの面からもサポートしています。

高齢者が安心して、いきいきと生活できる社会を作っていくために、新居浜で行われていることは参考になるモデルケースだと考えられます。

そうは言っても、現状の制度の枠組みとは異なる運営方法と取っているため、新居浜医療生協でもいろいろな困難に直面することがあるようです。

それは、財政的な問題であったり、制度的な問題であったりしますが、その都度現場の努力と工夫で乗り越えてきたようです。

政策ビジョン研究センターでは、こういった現場の声を聞きながら、高齢者の安全・安心を担保する地域医療・介護の制度作りに向けて、また良い医療・介護サービスのサステナビリティを作り出すために研究を進めていきたいと思っています。